小規模企業共済で個人事業主が退職金づくり|節税例とデメリット

リビングで通帳を見るミドルの夫婦

業務委託で働き始めて「会社員と違って退職金がない」と気づき、老後のお金が心配になった方は多いはずです。結論からいうと、個人事業主には自分で退職金を積み立てる公的な制度があり、その代表が小規模企業共済です。この記事では仕組み・節税シミュレーション例・デメリット、そして収入に波がある人の掛金の決め方まで整理します。

業務委託・個人事業主に退職金がない理由と、その備え方

通帳と貯金箱を前に考える人

業務委託は、会社と雇用契約を結ばずに仕事を請け負う働き方です。退職金は会社が従業員のために設ける制度なので、雇用関係のない個人事業主には原則として退職金がありません。業務委託と正社員の違いは、業務委託のデメリット7つ|正社員との違いと後悔しない選び方でも詳しく比較しています。

ただし、個人事業主向けには小規模企業共済・iDeCo・国民年金基金など、自分で掛金を払って将来に備える仕組みがあります。このうち「退職金」の役割にもっとも近いのが小規模企業共済です。次の章で基本を確認しましょう。

小規模企業共済とは?個人事業主が押さえたい基本

書類にペンで記入する手元

小規模企業共済は、国が出資する独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する、小規模企業の経営者や個人事業主のための退職金制度です。主なポイントは次のとおりです(2026年10月時点の一般的な内容。制度は改定されることがあるため、最新情報は中小機構の公式サイトで確認してください)。

項目内容
掛金月額1,000円〜70,000円の範囲で、500円単位で自由に設定
税制掛金は全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象
掛金の変更加入後に増額・減額ができる(減額には注意点あり)
受け取り廃業時や一定年齢以降に受け取れる。一括のほか、条件を満たせば分割・併用も選べる
貸付制度納付した掛金の範囲内で、事業資金などの貸付を受けられる

加入できる個人事業主の条件

加入できるのは、事業を営む個人事業主とその共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)、小規模企業の役員などです。業種ごとに「常時使用する従業員の数」の上限が決められており、従業員を雇わずに一人で仕事を請け負う個人事業主であれば、この人数要件で引っかかることはまずありません。

申し込みは金融機関や商工会議所などの窓口で受け付けており、オンラインで手続きできる場合もあります。申し込み時は確定申告書の控えや開業届の写しなどで事業の実態を確認されます。業務委託で働き始めたばかりの方は、開業届を出しているか、事業所得として申告しているかを先に確認しておきましょう。業務委託の収入と確定申告の関係は、ポスティング業務委託とは|収入の仕組みと確定申告を徹底解説で解説しています。

共済金を受け取れるタイミングと受け取り方

共済金は、主に次のようなタイミングで受け取れます。

  • 個人事業を廃業したとき
  • 65歳以上で、一定期間(180か月)以上掛金を納付しているとき
  • 加入者が亡くなったとき(遺族が受け取る)

受け取り方は一括が基本で、受取時の年齢(60歳以上)や共済金の額などの条件を満たせば、分割や一括と分割の併用も選べます。一括で受け取ると税法上「退職所得」、分割で受け取ると「公的年金等の雑所得」として扱われ、退職所得控除や公的年金等控除が使えるため、税負担が比較的軽くなりやすい仕組みです。加入者が亡くなった場合に遺族が受け取る共済金は、相続税の対象(みなし相続財産)になります。なお、自分の都合でやめる「任意解約」の場合は、受け取れる金額や税金の扱いが変わります(後述)。

小規模企業共済の節税シミュレーション(例)

ノートに字を書く手元

小規模企業共済の掛金は全額が所得控除になるため、その分だけ所得税と住民税が軽くなります。簡単な例で見てみます。

課税所得(例・掛金控除前)所得税率掛金(月額)年間掛金軽減される税額の目安(所得税+住民税10%)
300万円10%10,000円12万円約2.4万円
300万円10%30,000円36万円約7.2万円
500万円20%30,000円36万円約10.8万円
500万円20%70,000円84万円約25.2万円

※あくまで(例)です。軽減額=年間掛金×(所得税率+住民税10%)で概算しています。復興特別所得税(所得税額の2.1%)は含めておらず、含めると軽減額はわずかに増えます。税率は所得によって異なり、掛金控除で課税所得が税率の区分をまたぐ場合は計算が変わります。実際の節税額は税理士や中小機構のシミュレーションで確認してください。

同じ掛金でも所得が高い人ほど節税額は大きく、所得が少ない年は効果も小さくなります。

シミュレーションで見落としやすい2つの注意点

  • 事業の経費にはならない:掛金は経費ではなく、確定申告の所得控除欄に記入します。帳簿上は事業のお金から払う場合でも「事業主貸」などで処理するのが一般的です。
  • 国民健康保険料は下がらない:国民健康保険料の計算では、小規模企業共済の掛金控除は反映されないのが一般的です(自治体の計算方法によります)。節税効果は所得税・住民税で考えましょう。国民健康保険の仕組みは個人事業主の健康保険はどうなる?保険料の目安と切り替え方で整理しています。

小規模企業共済のデメリットと注意点

あごに手を当てて考える男性

長く続ける前提の制度のため、途中でやめると不利になる点があります。加入前に次の4点を確認しておきましょう。

①20年未満の任意解約は元本割れ、12か月未満は掛け捨て

自分の都合で任意解約した場合、掛金の納付月数が240か月(20年)未満だと、受け取れる解約手当金は払った掛金の合計を下回ります。さらに、納付月数が12か月未満で解約すると解約手当金は受け取れません。「数年だけ節税したい」という使い方には向かない制度だと理解しておくことが大切です。

②掛金の減額には注意が必要

掛金は加入後に変更できますが、減額すると、減額した部分の掛金について共済金の計算上不利に扱われる場合があります。「とりあえず高めに設定して、苦しくなったら下げる」という使い方は避けた方が安心です。

③受け取るときにも税金がかかる

共済金は非課税ではありません。退職所得や雑所得として課税されます。任意解約の解約手当金は、原則として一時所得として扱われます(65歳以上での任意解約は退職所得扱いになるなど、条件で扱いが変わります)。

④お金をすぐに引き出せない

廃業や一定年齢などの条件を満たすまで原則として受け取れません。貸付制度はありますが、借入なので返済が必要です。

iDeCoなど他の制度との違い

窓辺でスマホを見る男性

老後資金づくりでよく比較されるのがiDeCoです。どちらが優れているというより、性格が違う制度なので、目的に合わせて組み合わせを考えるのが現実的です。

比較項目小規模企業共済iDeCo
対象個人事業主・小規模企業の役員など原則として公的年金の加入者
掛金の扱い全額所得控除全額所得控除
運用自分で運用商品を選ぶ必要はない(受取額は掛金・納付月数と制度上の利率で決まり、利率は見直されることがある)自分で運用商品を選ぶ(運用成果で増減)
受け取りの条件廃業時・一定年齢以降など原則60歳以降
途中のお金の利用掛金の範囲内で貸付あり原則として引き出し不可
主な注意点短期の任意解約は元本割れ運用次第で元本を下回る可能性

iDeCoの掛金上限は国民年金基金などとの合算で決まり、加入年齢や上限額の見直しなど制度改正も予定されています。併用時の配分は所得や家族構成で変わるため、最終的な判断は税理士やFP(ファイナンシャルプランナー)に相談すると安心です。

収入に波がある業務委託の人の掛金設計の考え方

リビングでくつろぐミドルの夫婦

ここからは、出来高制の業務委託ドライバーや配布スタッフのように、月によって収入が変わる人向けの考え方です。会社員の退職金と違い、掛金は自分で払い続ける必要があります。そのため「いくら節税できるか」よりも「無理なく何十年も続けられるか」を基準に決めるのが要点です。

ステップ1:先に確保するお金の順番を決める

小規模企業共済は長期で続けることが前提です。掛金を決める前に、次の順番でお金を確保しておくと、途中解約のリスクを下げられます。

優先順位確保するお金目安の考え方
1税金・社会保険料の支払い分確定申告後の納税や国民健康保険料・国民年金保険料に備えて、収入の一部を毎月取り分けておく
2生活防衛資金収入が少ない月が続いても困らない生活費の蓄え
3車両・仕事道具の維持費車検・修理・タイヤ交換など、仕事を続けるための出費
4小規模企業共済の掛金1〜3を確保したうえで、続けられる金額

ステップ2:収入が少ない月を基準に「低めに始める」

掛金は、増額は手続きをすれば可能ですが、減額には注意点があります。そのため、収入が少ない月でも払える金額から始め、続けられると確認できてから増やすのが堅実です。

(例)繁忙期の月収が約40万円、閑散期の月収が約20万円という出来高制の人(数字は説明用の仮定)なら、閑散期でも負担にならない月1万〜2万円程度から始め、1年ほど収支を見てから増額を検討する、といった進め方が考えられます。配布ドライバーの収入と経費のイメージは、配布ドライバーの手取りはいくら?経費を引いた収入を実例で公開も参考になります。

ステップ3:余裕がある年は年末に見直す

「今年は収入が多い」と分かった年は、掛金の増額や前納を検討する方法があります。前納した掛金の取り扱い(どの年の控除になるか)には細かいルールがあるため、手続き前に中小機構や税理士に確認しましょう。

業務委託で働くなら、退職金は「自分で設計する」もの

キャンプチェアでくつろぐ夫婦

業務委託では退職金を自分で備える必要がある一方、掛金の額や制度の組み合わせを自分の収入や生活に合わせて選べます。働き方の違いを整理したい方は、業務委託と正社員の違いを徹底比較|手取り・自由度・安定性は?もあわせてご覧ください。

Green Plusの配布スタッフも、業務委託契約で働く個人事業主です。軽バンで配布エリアまで移動し、車を停めて一帯を徒歩で配るスタイルで、電話帳・広報誌・広告物などを全国の家庭や企業へ届けます。報酬は出来高制でノルマはなく、稼働は8〜20時の範囲で自分で調整できます。月ごとに配置地域を選べるほか、全国出張で働くこともできます。

よくある質問(FAQ)

Q. 小規模企業共済に個人事業主は加入できますか?

A. 加入できます。業種ごとに従業員数の上限がありますが、一人で事業をしている個人事業主なら人数要件で対象外になることはまずありません。

Q. 小規模企業共済は個人事業主をやめたらどうなりますか?

A. 廃業した場合は共済金を受け取れます。一括が基本で、年齢や金額の条件を満たせば分割・併用も選べます。一方、任意解約では納付月数20年未満だと受取額が掛金合計を下回り、12か月未満では受け取れません。

Q. 小規模企業共済の掛金はいくらから始められますか?

A. 月額1,000円から70,000円の範囲で、500円単位で設定できます(2026年10月時点)。収入に波がある人は、少ない月でも払える金額から始めるのが堅実です。

Q. 小規模企業共済の掛金は経費になりますか?

A. 事業の経費にはなりません。掛金は確定申告で「小規模企業共済等掛金控除」として所得から差し引く、所得控除の扱いです。

Q. 小規模企業共済とiDeCoはどちらがいいですか?

A. 一概にはいえません。小規模企業共済は運用商品を選ぶ必要がなく貸付制度もあり、iDeCoは運用次第で受取額が変わり原則60歳まで引き出せません。組み合わせは税理士やFPに相談して決めると安心です。

まとめ

業務委託で働く個人事業主には会社の退職金がありませんが、小規模企業共済を使えば自分で退職金を積み立てられます。掛金は月1,000〜70,000円で全額所得控除の対象になり、所得が高いほど節税効果も大きくなります。一方で、20年未満の任意解約は元本割れになるなど、長く続けることが前提の制度です。

収入に波がある出来高制の人は、税金・生活防衛資金を先に確保したうえで、収入が少ない月でも払える金額から始めるのが続けるコツです。制度の最新情報は中小機構の公式サイトで確認し、具体的な掛金額は税理士やFPにも相談してみてください。

業務委託という働き方そのものに関心がある方は、Green Plusの配布スタッフの募集内容もご覧ください。履歴書不要で、オンライン面談から話を聞けます。

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※報酬は配布件数に応じた出来高制です。月15万〜75万円・日1万〜2.5万円は稼働状況による例・変動があり、金額を保証するものではありません。

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※本記事は2026年10月時点の一般的な制度情報をもとにまとめたもので、加入や特定の金融商品を勧めるものではありません。制度は改定されることがあるため、最新の内容は独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)の公式サイトで確認してください。節税額は所得や控除の状況によって異なります。具体的な判断は税理士・FPなどの専門家にご相談ください。